会長就任の挨拶
日本糖質学会会長
北島 健
2024 年元旦の能登半島地震における石川県を中心とする被災者の皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
この度、2023年度から2年間、会長として日本糖質学会 (JSCR) にこれまで以上に深く関わることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。脅威を振るった新型コロナウイルスは2023年5月から季節性インフルエンザウイルスと同じ5類に移行され、4年振りに忘年会で町が溢れかえる日常が戻ってきました。望むらくは、JSCRの活動も同様に活気を取り戻したいと思う次第です。この10月からは、11年振りにJSCRのホームページがリニューアルされましたので、是非ご利用下さい。会員にとってより身近な存在になるようにさらに改善を重ねていきたいと思っています。
私は大学院生の時にJSCRに入会し、それ以来、毎年各地で開催される年会に出席して、発表したり、研究仲間と議論したりすることを楽しんできました。それぞれの年会は、会員企画ワークショップを取り上げたり、最新トピックスをフィーチャーしたり、世話人の皆さんの創意工夫によって味わいのある会が演出されています。直近の鳥取大会では、サイエンス面も然ることながら、空港での会員交流の場が圧巻で深く印象に残っております。年会における様々な知識や技術そして人との出会いは、JSCRの根幹を成しており、その重要性は変わることはありません。さて、本会は2024年7月から学生会員の会費の無料化に踏み切ります。2024年の横浜での年会から、学生の皆さんは学会参加費のみで発表が可能になります。こぞってご参加いただき、友と出会い、楽しい大会にしましょう。
去る11月には米国ハワイ島にてSociety for Glycobiology (SfG) の設立50周年記念となる年会が行われ、JSCRも共催学会として参加しました。その際、JSCRはInternational Carbohydrate Symposium (ICS)トラベル基金に加えて特別に予算計上して、9名の学生や若手研究者の参加支援を行いました。国際連携や協調はJSCRとしても重要な課題であり、今後もこのような国際学会等への参加支援は充実させていきたいと考えています。ところで、JSCRは2023年に創設45年目を迎え、SfGと肩を並べる糖質関連学会の老舗です。今回の共催年会においても、その発表内容は両者ともに見応えあるものでした。しかし、敢えて違いを述べますと、今回JSCRセッションでは好奇心に裏打ちされたオリジナリティーの高い基礎科学的内容が目立ったのに対して、SfG企画セッションの方では疾病の診断・治療を指向し組織力や突破力の凄みを感じる内容が圧倒しておりました。我々も研究の新奇性、独創性を自負する一方で、社会実装に向かう研究を如何に力強く推進するべきかの戦略については学ぶべき点が多いと感じました。
最後に、JSCRが積極的支援を表明しておりますヒューマングライコームプロジェクト (HGA) が、文部科学省大規模学術フロンティア促進事業として採択され、ついに2023年4月からスタートしました。今後、日本におけるHGAの進展により糖鎖解析が広く深く浸透し、技術革新が連動すれば、世界と協調してオミックス領域が先鋭化し、人工知能 (AI) 利用を含む情報科学との連携も相俟って、糖質科学の多様化と広領域化が格段に進行していくものと思われます。異次元サイエンスの到来もそう遠くないかも知れません。